こんにちは。量子コンピュータの世界もちょっとずつですが進展しています。今回は量子コンピュータを使った組合せ最適化計算です。量子ゲート方式の量子コンピュータは量子ビットが少ないからまだまだ最適化も規模が小さいと思われがちですが、最新の量子シミュレータと呼ばれる汎用量子一歩手前のマシンでは、289量子ビットのQAOAと呼ばれるアルゴリズムが実行されています。
米QuEra社、256 量子ビットの量子シミュレータを発表、1700万ドル(約20億円)の資金調達
https://www.quantumbusinessmagazine.com/post/quera
https://arxiv.org/abs/2202.09372
ハードウェアもQuEraが新型冷却原子の量子コンピュータで2024年に1024量子ビットの量子ゲートを告知するなど順調にサイズを拡大しています。IBMも1000量子ビットマシンを告知しています。それに合わせて課題になるのが問題があっているのかどうかを判断するシミュレーションで、正直今までの技術ではこのような大きな量子ビットに対応が難しいという事情がありました。それは、量子コンピュータの計算は重たいので、50量子ビット程度までしか計算ができないといわれていたものですが、そこを打開する技術が発展し大きな量子ビットを計算できるようになりました。それがテンソルネットワークです。
NVIDIA、量子コンピューティング開発用に関連ツールを発表
それでは、なぜテンソルネットワークがそのような大きな量子ビットを扱えるようになったのかを簡単に説明します。
通常量子コンピュータは量子ゲートと呼ばれる操作を、音楽の音符のように左から右に時間で操作をします。しかし、テンソルネットワークではシミュレータですのでこの時間に縛られることがありません。量子コンピュータは時間どおりに操作をしますが、量子ビット同士の計算を行った結果量子もつれと呼ばれる状態に陥ります。これが時間で早い段階で発生すると、シミュレーションとしては重たくなり、その後の計算すべてが遅くなります。
一方、テンソルネットワークシミュレータではこの時間に縛られないため、計算の軽い個所から順番に計算を行って、重たい計算を最後に行うためにこの制約に縛られることがありません。また、計算は様々な場所で同時に行えますので、多数のマシンを組合わせても高速性が発揮できます。これによって得られる高速化は量子回路の性質にもよりますが、比較的機械学習や最適化計算に向いているといわれています。そのため、NVDIAの量子コンピュータツールのcuQuantumに搭載されているcuTensorNetを利用することにより、だれでもこの高速性を手に入れることができます。
まさに、昨年から突入している100量子ビット越えの量子ゲートにピッタリの量子回路シミュレータで、多くの研究開発に利用ができます。また、このcuQuantumは既存のGPUに対応していることから機械学習に取り掛かって計算資源のある企業様にとっては追加の出資なしで高度な量子計算にとりかかることができます。
また、東京大学に設置されている量子コンピュータのソフトウェア講座では、このテンソルネットワークを積極的に活用しています。一般向けや専門家向けの講座も開設していますので、ぜひご覧ください。
http://qsw.phys.s.u-tokyo.ac.jp/
2022年の量子コンピューティングEXPO春では、マクニカさんがNVIDIAのスパコン、DGX SuperPODの販売をされており、cuQuantumも組み合わせることでとんでもない計算ができるようになりますので、ぜひ導入を検討されている方はご注目ください。
https://corp.blueqat.com/ja/expo2022ss
以上です。