メリークリスマス。量子コンピュータは黎明期でエラーが多いですよね。エラーがありながらもこれまで量子コンピュータと既存コンピュータをハイブリッドで使ってなんとかアプリを作ろうとみんな頑張ってきました。
実際にはNISQとVQEは理論的な発展はありましたが、商業的な価値は出せずに敗退しました。今は各社誤り耐性マシンの開発を主軸において、NISQは諦めています。
シミュレータでは計算できるけど実機で計算できない
それでもVQEは研究としては発展してうまく行きそうに見えますが、何がだめなのでしょうか。それは、シミュレータでは実行できるけど、本物の量子コンピュータでの実行が厳しいからです。本物のマシンで実行できないと絵に書いた餅になってしまいますが、実際には餅のままでした。
原因の一つは状態ベクトルの扱いで、求めたいハミルトニアンの期待値を精度よく求めるのが原理的に難しいことです。アルゴリズムとの相性がとても悪いです。
理論研究ではシミュレータを利用しますが、こちらは本来取れない状態ベクトルを利用できます。量子回路には変分パラメータと呼ばれるパラメータが入っており、それが最終的に状態ベクトルに影響します。
VQEなような量子古典ハイブリッドアルゴで固有値を求める際には、ハミルトニアンの期待値を状態ベクトルから求めます。シミュレータだと、角度の数値がきちんと精度よく反映されますが、実機ではまず角度パラメータの解像度も良くなく、かつ、量子回路のエラーが蓄積します。
また、一番筋が悪いのが、実機では状態ベクトルが取れないため、サンプリングを通じてハミルトニアンの値を求める必要があります。精度よく固有値を求めるためにはかなりの数のサンプルを取る必要があります。エラーの多いマシンからサンプルをとって精度の高い計算をするのはほぼ無理です。
ですので、実際には理論が先行して実機では数量子ビットしか実際には実行できないという乖離がおきます。
本物が使えないでシミュレータだけだと意味がないので、NISQはあきらめられつつあります。
ということで汎用量子計算がんばろう!