アメリカ・シアトルの Interlune社 は、月面に豊富に存在するとされるヘリウム3(He-3)を採取し、量子コンピュータの冷却に活用する計画を進めています。
すでに米国エネルギー省や量子インフラ企業Maybell Quantumと契約を結び、2029年以降の商業供給を視野に、掘削機の開発から月面実証までロードマップを描いています。
この動きは、量子コンピュータを研究室から大規模インフラ産業へと拡大するために、冷却資源の確保が不可欠であることを示しています。
日本はどうするか?──量子産業化の視点から
日本はシリコン量子ビットや超伝導など、基礎研究や素子開発で強みを持ちながらも、量産化・産業化の基盤部分では課題を抱えています。特に、量子コンピュータを数百〜数千ビット規模へ拡張する際には、以下が避けて通れません。
- 安定かつ持続的なHe-3供給網
- 低消費リソース型の冷凍技術(半導体量子ビット向け0.3K冷却など)
- 製造装置産業との並列展開(半導体製造ラインに量子チップ評価環境を組み込む)
Interluneのような「宇宙資源確保」まで踏み込む動きは極端に見えるかもしれません。しかし、これは量子産業を支える冷却資源の確保が競争力そのものになることを意味します。
日本が本気で量子コンピュータを産業として量産化したいなら、
- 国際的なHe-3開発への参画、
- 半導体産業と結びついた量子専用素材の供給網構築、
- サブケルビン冷凍技術の商用化推進、
といった施策を急ぐ必要があります。
まとめ
量子コンピュータの未来は、素子やアルゴリズムだけでなく、冷却資源と素材の産業基盤に左右される段階に入りました。
世界はすでに「研究」から「量産インフラ」の時代に移ろうとしています。
日本がこの波に乗り遅れないためには、量子と半導体の産業化をつなぐ戦略と、冷却資源をめぐる国際競争への積極的な参加が欠かせません。