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[他社レビュー] 猫量子ビットとは?:Amazonの連結ボソニック量子ビット

Yuichiro Minato

2025/03/01 07:43

Amazon社が出している猫量子ビットという新しいアーキテクチャについてのNature論文を見てみたいと思います。
猫量子ビットはAmazonやフランスのAlice&Bobが作っている新型の超伝導量子ビットです。

だいぶ前の記事で少し触れました。が、その時には内部まで触れませんでした。

誤り訂正に最適。ビット反転が起こらない(起こりにくい)cat qubit。猫量子ビット。2022/04/10
https://blueqat.com/yuichiro_minato2/e68a60ba-f34e-4550-9606-c1b815c44e4e

今回Amazonからも新しいマシンが出たのですが、猫量子ビットをきちんとは勉強していなかったので、この際きちんと把握しておこうと思います。

Hardware-efficient quantum error correction via concatenated bosonic qubits
https://www.nature.com/articles/s41586-025-08642-7

論文は猫量子ビットを構成する部分とその性質を使った誤り訂正になります。今回はそもそも猫量子ビットを理解するところを確認したいので誤り訂正の部分は軽めにして、そもそも猫量子ビットというものを理解することを主眼にしたいと思います。

ボソニック量子ビットと猫量子ビット

今回のマシンの特徴はこれまでの超伝導量子ビットの01からスタートする量子ビットとは異なり、「ボソニック量子ビット」と呼ばれるものを利用しています。ボソニックはボソンから来ており、ボソンの一種である光の粒子である光子を利用しています。今回のボソニック量子ビットは、「コプレーナ波動導波管共振器(CPW共振器)」と呼ばれる装置を利用し、特定の電磁波を閉じ込めることができるそうです。そこでは、量子ビットといえども01の2値を使うのではなく、0,1,2,3,...のような連続量と呼ばれる値を利用します。連続量は光量子コンピュータの一部でも利用されています。

ボソニック量子ビットには複数の種類があり、その中でも光の特定の量子状態である「コヒーレント状態」を利用するタイプのものを猫量子ビットとよびます。特定の二つの相反するコヒーレント状態の重ね合わせを猫状態と呼ぶため、それを利用する量子ビットを猫量子ビットと呼ぶそうです。

よく箱の中に猫を入れて開けたら死んでしまうけど、開けるまでは猫は死んだ状態と生きた状態の重ね合わせ状態という「シュレディンガーの猫状態」がありますが、それです。シュレティンガーの猫を計算に利用するのが猫量子ビットです。

今回の猫量子ビットはたくさんの光子を入れることで損失に強くなり、超伝導量子ビットと相性がよく接続ができ、猫量子ビットを利用することで現在の量子コンピュータの開発の一つの目的である誤り訂正が行いやすくなるというものとなっています。

また、猫量子ビットはバッファーモードと呼ばれる装置でさらに安定化されています。バッファーモードは、非対称スレッドSQUID素子という素子で、猫量子ビット内部で二光子散逸という振る舞いを維持するために利用されています。猫量子ビットでは、単一光子損失と言って、一つの光子が漏れ出して失われてしまうと位相反転と呼ばれるエラーを引き起こしてしまうため、光子が失われる際に二つの光子を同時に損失させるように工夫をするようです。これを実現するのが非対称スレッドSQUID素子のようです。

バッファーモードは直接猫量子ビットそのものではないですが、クオリティを保つために必要な補助装置のようなもののようです。

猫量子ビットとビットエラー

猫量子ビットを利用することで今回いちばんのメリットはビット反転エラーが大幅に減らせるということです。ビット反転エラーは|0>が|1>にエラーで反転してしまう状態ですが、通常のこれまでの超伝導量子ビットでは外部環境によって影響を受けます。一方猫量子ビットでは、もともと外部環境の影響を受けづらい光子を利用している上、今回のビット反転エラーが起きる仕組みを原理的に小さくしています。

猫状態では、0と1に対応するコヒーレント状態のエラーでの反転は、その猫量子ビットに含まれているおおよその平均の光子の数が増えるほど指数関数的にエラーが減少するという性質があり、簡単には0と1を間違えなくなります。そのため、量子ビットとして0と1のエラーを無視できるほど小さくでき、位相反転と呼ばれるもう一つのエラーの発生と訂正に集中できます。

これまでの量子コンピュータの量子ビットはビット反転と位相反転という二つのエラーに同時に対応する必要があったため難しいと言われていたところ、デバイスの物理的な特性を利用して片方のエラーを極端に出にくくする方法によってエラー訂正をしやすくしようという試みです。

連結ボソニック量子ビット

今回のマシンは猫量子ビット単体ではなく、誤り訂正の実証のために二つの量子ビットを連結して利用しています。CXゲートと呼ばれる量子ゲート操作は、Cの制御側とXのターゲット側で構成されています。制御側が0のときにはターゲット側は操作せず、制御側が1のときにはターゲット側にXを実行します。今回Cの制御側には猫量子ビットではなく、超伝導量子ビットで一般的なトランズモン量子ビットを利用しているそうです。異なる2種類の量子ビットを連結して利用しています。

まとめ

猫量子ビットという名前が可愛いのは、シュレディンガーの猫状態を利用している量子ビットであるというところが由来でした。このシュレディンガーの猫状態である二つの状態は、超伝導回路の中の共振器に含まれる平均の光子数が増えるほどにエラーが指数関数的に起きにくくなるという物理的な特性があります。量子コンピュータのエラーは通常ビット反転と位相反転と呼ばれる二つのエラーに対応する必要がありますが、猫量子ビットではビット反転が極端に起きにくいため、人類は位相反転に集中してエラー訂正を行うことができるようになるという仕組みでした。

猫量子ビットも万能ではないみたいなので、これからも色々苦労はありそうですが、新型の超伝導量子ビットということで興味がありましたが、大体の仕組みが理解できて嬉しいです。以上です。

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