こんにちは。以前飛騨高山地方にお邪魔して量子技術のイベントをしてきました。その時に大変な熱気を感じましたので、飛騨高山地方に何かしらプロジェクトとして量子技術が使えないかと言うことで現在2つほど進んでいます。弊社ではその片方の飛騨地方のプロジェクトを進めていますので、紹介します。
飛騨高山勉強会レポート
https://blueqat.com/yuichiro_minato2/4bbea96e-ea87-424d-a2d4-d94bde3e048e
飛騨牛と日本酒と温泉を楽しめる最高のロケーションです。休日は観光客でごった返し、9万人の人口の山岳都市に年間300万人が訪れ、コロナ後も順調に回復しているようです。実際にお邪魔した際にも大変混雑していて、電車も海外の方がほとんどでした。
今回のプロジェクトは、こうしたオーバーツーリズムの傾向のある高山に対して、その直近の飛騨は街としての魅力が十分に行き渡っておらず、隣接する高山市に対して賑わい創出に対して課題を抱えているようでしたので、今回は外部からの訪問客に対して飛騨の魅力を訴求するというプロジェクトを量子技術を利用して行うことにしました。
今回利用した技術は実はかなり昔から開発しているもので、カナダのD-Wave社の公式動画の扉絵にもなっているものです(社名がblueqatに変更する前のMDRになっていますが気にしないでください)。
https://www.youtube.com/@dwavequantum/videos
広告最適化は以前から取り掛かっている弊社の人気コンテンツですが、あまり使ってきませんでした。その理由が。。。
素材を集めるのがとても大変だからです。
広告素材を集めるというのは結構な労力を使うので大変だったので予算や機会がある際に使っていた技術ですが、昨今生成AIでその素材を簡単に手に入れることができるようになりました!ということで再活用します。
D-Waveでもできるのですが、量子ゲート型の量子コンピュータでも利用できるため、モデルを改造して量子回路向けの広告最適化モデルに変更をしてみます。フローとしては、
1、広告を自動生成し効果測定を通じてモデルを学習。さらに生成精度を上げる。
2、広告の飛び先に飛騨の魅力を伝えるコンテンツを準備してコンバージョン(成約、この場合には飛騨を訪れてもらう)に繋げる
というものです。広告だけでなくウェブサイトも自動生成できる技術ではありますが、順番に行うために今回は広告を生成してみます。
量子アニーリングはボルツマンマシンやボルツマン分布と呼ばれる確率分布を利用したモデルを使っていましたが、量子ゲートではさらに表現力を強化したボルンマシンと呼ばれるモデルが利用できます。
仕組みはシンプルです。広告の元となる素材をLLMで生成します。今回写真は現地の協力会社によって提供されました。飛騨の観光をしたいという需要を喚起し、ターゲットを確認します。
今回広告の飛び先は現地のツアー会社のハッピープラスさんとさせていただきました。
今回いくつかの条件や注意事項がありました。
・広告のクオリティは写真とレイアウトが大勢を占めた。レイアウトは固定。
・写真は現地の協力会社から提供。現地の魅力を知る方。
・広告の集客に関しては組合せということもあり、文言はあまり複雑なものはしていない。写真に合わせて文言を決めることもできるが比較ができなくなるので除外。
・バナーの色なども全部LLMで決めた。
・文言もLLMで決めた。
・写真の選定は人の目で決めた。
結果システムで自動生成された広告を20個生成しました。
文言生成のプロンプトは一般的なものとしました。
「観光地誘致のための広告バナーに使用するためのクリックを促進する短いフレーズ」
「ちょっと明るめでいい感じのものをカラーコード指定で5つ」
このようにカラーコードやフレーズなどの長さを指定して作ることができます。
ロゴは固定です。左上に自分で作りました。企業のバナーなどを実行する際にも全て固定で行っています。
どうでしょうか。意外と広告として最低限のクオリティが出た気がします。
一見ほぼ同じ広告などもあります。そうしたものは類似度を計算して除外することもできますが、今回はそのまま入稿してみました。
また、実は一部文字のレイアウトが被っているものもあります。一応文字の長さを判定して除外もできますが、広告にどのような影響があるのかを判定するためにも残しておきました。もちろん事前に人の目で出したくない広告を除外することもできます。
今回の選択肢は比較的少なめです。
メインテキスト5種類
背景画像5種類
バナー色5種類
バナー文言5種類
ボタンテキスト3種類
全部で1875通りしかありませんので、あまり探索空間として広くない広告です。ただ、低コストで素早く出稿したいという思いがありますので、これでいいかなと思いました。結果が楽しみです。
メインのテキストは、
ここでしか体験できない!
あなたの次の冒険はここから始まる
歴史を感じる旅へ
絶景を求めて
家族で楽しむ忘れられない休暇
バーカラーは、
#87CEEB
#F88379
#40E0D0
#E6E6FA
#FFFACD
バーテキストは、
あなたの夢の旅を叶えます
美しさを探しに行こう
思い出に残る冒険を
秘境を発見する旅
伝統と魅力の探訪
ボタンテキストは、
今すぐチェック!
サイトへGO!
今だけのチャンス!
となりました。結果が楽しみですね。出稿です。
条件等は下記です。
・googleディスプレイ広告アドネットワーク
・バナーを20個入稿
・上限インプレッション単価100円(ちょっとクリック単価と勘違いしてました)
・ターゲット設定なし。
・日本語広告なので日本国内限定(うっかりしてました)
全体概要結果
・2024/1/22に実行
・予算1.45万円(もっと少なくてもよかったかも)
・クリック数161回
・表示回数546,227回
・クリック率0.03%(低い!)
・平均クリック単価90円(高い!?)
・平均インプレッション単価45円
・数十分で54万インプレッション完了?すぐできた。
では、結果を見てみましょう。細かいところは今後別の機会で紹介したいと思います。
一番結果の良かった広告は、、、
こちらでした。
クリック数が 13
表示回数が 27118回
平均クリック単価が56円
です。
クリック数が 4
表示回数が 27404回
平均クリック単価が179円
となりました。写真は同じなのに、メインテキストやバナーカラーなどで結果が異なるのはとても面白いですね!
実際ほぼ同じ広告なのに組み合わせを間違えるだけでクリック単価が3倍ほど異なってしまいます。同じくらいの表示回数なのに、
クリックが少ないということは飛び先の売り上げが単純に3倍悪くなります。
また、全体の平均クリック単価が90円くらいでしたので、単純に平均すると効率も悪いです。結構成績のいい広告が上位にいくつかありましたので、そうしたものに集中して資本を投下することで広告費用をかなり節約し効率的に使うことができます。
今回のトライアルで上位広告に予算投下を絞った場合、最大で39%の広告費用の節約となることがわかりました。
これは大変嬉しいことですね。実はこのシステムの優れている点はここからで、学習過程はブラックボックスと言って説明性があまりないのですが、出てきた答えは説明性が結構あるので人間の目で分析できます。
出力としては組み合わせで出てきます。各要素に関してCTRというクリック率でみてみます。例えばわかりやすいのはボタンテキストで、ある世代のボタンテキストによってクリック率が変わるかどうかを出力結果からプロットしてみます。
その結果、最終的には組合せなのでこれだけでは一概に結果は言えないのですが、**「今すぐチェック!」**が有利であることがわかります。こうして、要素を取り出して個別に説明ができますので、一番成績が悪かった広告はあらゆる要素の選択が間違っているというのが感覚的にわかる結果となりました。
文字は被ってるし、ボタンテキストは人気ないものだし、テキストも家族向けの文言で、実際に今回はターゲティングをしなかったので、ユーザー属性の傾向を見ることでクリック率が低かった原因もなんとなく類推することができました。
今回のユーザー属性はざっくりと、
年齢層が25-34歳が50クリック程度、35-44歳が30クリック、18-24歳が20クリック、と若い人が多かったです。
性別は男性が100クリック、女性が50クリック
子供ありが40クリック、なしが20クリック、その他不明
という感じでした。若い人が多く、実際には家族連れの文言も引っ掛からなかった場合が多かったのかなぁと類推できます。基本的には出力結果はブラックボックスではなく、組合せで出るのでとても分析がしやすいです。
今回は弊社が開発した広告最適化システムを利用して観光早出やユーザーにとっての魅力的な広告の分析をいっぺんに行ってしまうシステムを紹介しました。素材に関しても最近は生成AIが利用できますので、安く素早く広告を作ることができました。ただ、作った広告がいいものかわからないので、実際に作ったものをgoogle広告に出稿し、ユーザーのクリック数を元にフィードバックをかけることができました。その結果広告システムとして39%の予算削減ができた上、クリエイティブに時間を使う必要がありませんでした。量子技術としても広告生成は計算が一瞬で終わりますので、量子のコストもかかりません。量子技術を使ってコストを削減できたいい事例だと思います。
以上です。